5. 結論:マジック・リスニングは買いなのか?
もしマジック・リスニングが本当に英語に適した聴覚を養成することに成功しているとするなら、それは第二言語習得理論の立場からしてもかなり興味深いことであるといえます。なぜなら、第二言語習得理論という学問分野では、人間には「critical
period(臨界期)」というものがあり、ある一定の年齢を過ぎると、ネイティブと遜色のない言語能力を身につけるのは非常に困難になるという学説があるからです。
"critical
period"は文法と発音で時期が違い、一般に発音の方が文法よりも"critical period"が来るのが早い、と考えられています。
「子供のための英語」ガイドの清水さんは、こちらの記事で「9歳を過ぎるとネイティブ並みの発音を身につけることは難しくなる」という「9歳のかべ」説を紹介されていますが、他にも「6歳」・「10歳」・「12歳」・「思春期」でかべがあるなど、様々な説があります。
発音に関する"critical
period"がいつなのか、諸説紛紛としていることは確かですが、ある一定の年齢を過ぎると、ネイティブ並みの言語運用力を身につけるのは極めて難しくなるという点において多くの学者が一致している、ということは事実なのです。
もしマジック・リスニングに聴覚の硬直化を崩す効果が本当にあるとすれば、それこそ"critical
period"を巡る論争に新たな転換点を生み出すかもしれません。マジック・リスニングはその成果をある言語学会の世界大会で論文として発表したとの事ですが、更にApplied
Linguistics・TESOL Quartely・Studies of Second Language
Acquisitionなど、海外の権威ある論文集にも投稿し、その成果を広く世界に問うてみてはどうか、などと私は思います。
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また、第1回 マジック・リスニング体験記でも書きましたが、マジック・リスニングは英会話教材ではありません。日本語に慣れきった聴覚を英語に順応させ、英語を「聞き取れる」ようにすることを目指しており、それ以上でもそれ以下でもありません。
ですから、マジック・リスニングを使ったからといって簡単に「英会話ができる」ようになったり、「英語が完全に理解できる」ようになるわけではありません。いくら単語を音として聞き取れたとしても、その単語の意味を知らないのでは何の役にも立たないからです。
あくまで、マジック・リスニングは英語を聞き取る「耳」を作るものであり、その「耳」が例え出来たとしても、それを生かすも殺すもあなたの努力次第であるということなのです。
「いつの間にか英語がペラペラに!」などの誇大広告まがいの英語教材が多い中、「英語教材ではありません!」などとその限界を正直に公言するマジック・リスニングには、ある種の潔さすら感じてしまいます。
とはいえ、英語を聞き取ることが出来るだけでも相当なアドヴァンテージになりますから、英語耳さえ整えばその後の英語学習が加速度的に楽になるということはいえるでしょう。
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で、結局マジック・リスニングは「買い」なの?、「買い」じゃないの?
私はマジック・リスニング使用時に、既にある程度のリスニング力が備わっていたためか、はっきりと製品の効果を断言することはできませんが、信用第一であるネット通販でこれだけのベスト・セラーとなったのは、マジック・リスニングの質を保証する証の一つといえるかもしれません。
他にも、マジック・リスニングはリクルートのビジネスコンテストでハイテク部門賞や、楽天市場2000年ベスト・ヒットアイテム賞(第1位)・楽天市場2001年ショップ・オブ・ザ・イヤー部門賞(サービスジャンル賞)などにも輝いています。楽天市場は皆さんご存知の通り日本でも有数のオンライン・モールですから、楽天で栄誉に輝いたことは、マジック・リスニングの質を保証しているといえるでしょう。
ネット・ショッピングで不安なアフター・サービスについてですが、マジック・リスニングに関してはかなり充実しています。私もトレーニングのやり方や記事を書く上で不明なことについて電話などで問い合わせましたが、土・日・祝日も窓口は空いており、丁寧な応対をして頂きました。ちなみに、サポートに特に料金はかからず、電話はフリー・ダイヤルです。
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また、一部オークションではマジック・リスニングの中古品が出回っているようですが、アリスコーポレーションの広報の方によると、「製品の効果を期待するのであれば、オークションからの中古購入は避けるべき」、とのことでしたので、念のため付記しておきます。
1)中古品は製品チェックを受けていないため、前所有者が故障に気づかずにトレーニングしている可能性がある、 2)正規購入ではないため、故障に気づいても無償修理などのサポートが受けられない、
というのがその理由のようです。
私見ですが、実際に使用してみたユーザーとして、マジック・リスニングはトレーニングが少々複雑で、製品自体もデリケートであるため、電話やメールを通して受けられる発売元のサポートも重要な製品の一部だと思います。
オークションを通せば正規より安く購入できるのも事実ですが、それらの機器のコンディションは保証されていませんし、サポートも受けられないので、マジック・リスニングをフルに活用することはできないでしょう。最大限の効果をあげたいのであれば、新品を購入した方が賢明であると思います。
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購入前でもメールや電話で問い合わせできますので、疑問点のある方はそれらの手段を利用して解消されるといいでしょう。また、自分で確かめて納得してからでないと決断が出来ない!、という方は、とりあえず注文して自分で確かめてみるというのも1つの手ではあります。
マジック・リスニングには8日間の試用期間が設定されていますので、体験版だけを試聴して製品到着から8日以内に製品を返品すれば、商品の代金である5万円が全額返還されるのです(ちなみに、体験版CDは無料でもらえます)。
結局、私自身英語圏に長期留学経験があり、「英語のシャワー」を既に浴びていたからか、「劇的!」とまで言える効果を体験することは出来ませんでしたが、今後このような斬新なアプローチに基づく製品がもっと出てきてもいいのでは、と思います。
もう21世紀なのですから、何も机に向かってカリカリ勉強する以外に、英語力を伸ばす方法があってもいいのではないでしょうか。
更に興味のある方はマジック・リスニングの公式サイトをご覧下さい。体験版もこちらで注文できます。
【参考文献】
Ellis, Rod. Second Language Acquisition
Oxford: Oxford University Press, 1997. ---. The Study of Second Language
Acquisition Oxford: Oxford University Press, 1994. ---. 第二言語習得序説
金子朝子(訳). 東京:研究社. ---. 第ニ言語習得の基礎 牧野高吉(訳). 東京: ニュー・カレント・インターナショナル,
1988. Larsen-Freeman, Diane. Michael H. Long. 第二言語習得への招待
牧野高吉他(訳). 東京: 鷹書房弓プレス, 1995.
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