No.1 マジック・リスニング体験記
このページは、私がマジック・リスニングを実際に注文し、体験した感想を克明に記したものです。
みなさんはマジック・リスニングという商品をご存知でしょうか?(株)アリスコーポレーションという会社から出ている、リスニング力強化用の教材です。約5万円と言う高価な製品であるにも係わらず、一部の英語学習者の間では多大な人気を集めているようです。
基本的に、私は金をかけずに英語学習する主義です。このサイトでも、タダ同然のNHKのラジオ講座を活用することをお薦めしています。しかし、このマジック・リスニングは訪問者の皆様の関心も高いようですので、連載記事として特別に取り上げさせていただきたくことに致しました。
題して、「総力特集:マジック・リスニングの威力」です。果たしてマジック・リスニングとはどういう商品なのか?、本当に効果はあるのか?、ここまで人気の秘密は何なのか?、徹底的に解剖させて頂こうと思っております。
(註:このページは、以前あるサイトで3回にわたり連載していたものを、編集して掲載したものです)
マジック・リスニングって何なのさ?
マジック・リスニングを一言で言うと、「特殊処理されたトレーニング用CDを専用ヘッドフォンで聞き、英語に適した聴覚を養成することを目指すシステム」と言い表すことが出来ると思います。
トレーニングに使用するCDは約50分ほどの長さで、これを一日一回、連続して計12日間聴くことで、英語の聞き取りに適した聴覚を養うことが出来る、と言います。
トレーニング用CDの内容はかなり変り種です。英会話のダイアログも確かに流れてくるのですが、それに加えてクラシック音楽、さらに水流などの効果音も流れてくるのです。
取扱説明書などによると、CDに収録された音楽は、機械により特殊処理をされている、といいます(以下、「特殊処理をされた音楽」のことを、「処理音」と言います)。
更に面白いことに、ユーザーはCDを聞くとき、吹き込まれている英会話ではなく、バックに流れている「処理音」の方に耳を傾けなくてはならない、といいます(ここら辺のからくりが慣れないうちは判りにくいので、後で詳しく解説させていただこうと思います)。
また、トレーニング用CDを聞く際は、必ず付属の専用ヘッドフォンを用いなければなりません。アリスコーポレーションによると、付属のヘッドフォンは非常に高性能なもので、低音から高音まで差が出ず、フラットな音質が得られるように工夫されている、とのことです。
トレーニング用CDに収録されている音源は、このヘッドフォンを使用した時に最大限の効果が得られるように処理が施されているようです。市販のヘッドフォンやスピーカーの中には、重低音のみが強調されるように設計されたものもありますから、トレーニング用CDとこのヘッドフォンは必ずセットにして使用しなければならないのです。
マジック・リスニングは英会話教材ではない!
ここで一言申し上げなくてはいけないのは、「マジック・リスニングのメインは英会話教材ではない!」ということです。
純粋な意味での英会話教材とは、ヒアリング・マラソンや各種のCD付英語学習雑誌のように、英会話とそれを学習する為のテキストが付属しており、学習者は、テキストを頼りに収録されたダイアログを理解するように努め、リスニング力・語彙力などの増強を図るものです。
マジック・リスニングにも、確かに英会話は収録されており、英会話のトランスクリプト(英語の本文)・日本語訳・解説などを収録したテキストも付いてきます。
しかし、そのような一般の英会話教材的使い方は、マジック・リスニングの本質ではありません。
マジック・リスニングの本質
それではマジック・リスニングの本質とは何なのかというと、ズバリ、「英語を聞き取るのに最適な聴覚を養成する」という一語につきます。
これが、アリスコーポレーションが盛んに言っている「英語耳」育成、というやつです。「英語耳」などという名前を使うと少し安っぽく聞こえますが、実は、アリスコーポレーションの言う「英語耳」の本質は、英語と日本語の言語学的な相違を克服する、ということであり、言語学的見地からは非常に興味深いものなのです。
言語学的には英語と日本語の音声には、以下のような2つの大きな違いがあります。つまり、
1、 周波数の違い
2、リズムの違い
という2つの大きな違いです。
小さな頃から日本語のみに接していると、我々の脳は次第に日本語の周波数とリズムに適したものに発達してゆきます。これは、雑音の中からでも「日本語らしきもの」が聞こえてきたらそれに照準をあわせて拾い上げることができる、という点で非常に都合が良いものです。
しかし、我々が日本語とは違う周波数とリズムを持った言語(例えば、英語)を勉強しようとすると、この日本語に適した認知システムはあだになります。日本語の周波数とリズムを持たない英語の発話が耳に入ると、「これは不要な情報だ」と脳が判断し、それを排除する方向に作用するからです。
つまり、一般的日本人の持っている聴覚は、日本語特有のリズムと周波数を聞き取ることに特化し、それ以外の言語にはうまく対応できないものである、ということです(アリスコーポレーションの言葉を借りれば、この聴覚システムは「英語耳」ならぬ「日本語耳」といったところでしょう)。
マジック・リスニングの本質は、この日本語に適した聴覚ゆえの障害を取り去り、英語の周波数とリズムに適した聴覚(すなわち「英語耳」)を日本人の脳に育成することにあります。
マジック・リスニングは通り一遍の教材のように、「海外旅行」や「商談」などに関する英会話を聞かせ、そのトピックで頻出する英単語や慣用表現を勉強させる為だけのものではないのです。周波数とリズムと言う両言語の言語学的な違いを克服し、日本人に英語を聞き取るのに最適な聴覚を与える為のものなのです。
ですから、もしマジック・リスニングがその謳い文句通りの効能を有するものであれば、日本人が英語を聞き取れない根本的な原因を解決することができるはずです。
これが、マジック・リスニングは英会話教材ではない、という言葉の真意です。
マジック・リスニングの仕組み
でも、日本語の周波数とリズムに適した日本人の聴覚を、どうやって英語に適したものにするというのでしょうか?それを説明する為に、「英語と日本語では周波数とリズムが違う」ということが具体的にどういうことなのか、詳しく説明させていただこうと思います。
1、周波数の違い
日本語を母国語として育てられた我々は、500〜1000ヘルツ前後の音に対して敏感に反応できるような聴覚を持っています。しかし、英語では日本人には認知されにくい2000ヘルツ以上の音が中心である、といいます。
ゆえに、日本人は英語の中でそれらの高周波の音を耳にしたとしても、「これは日本語ではないから不要な情報である」と判断し、雑音として処理してしまうことがあります。
しかし、厳密には我々の脳がそれらの高周波の音を排除しているだけであって、実際にそれらの音が耳に届いていないわけではありません。
マジック・リスニングはこのカラクリに目をつけ、特殊処理をされたトレーニングCDと専用ヘッドフォンで、高周波の音を我々の耳にドンドン浴びせ掛けてきます。これにより、我々の脳に高周波数の音の存在を認識させ、認知周波数帯を拡張することを目指しているのです。
また、クラシックやジャズなどの音楽の中にも、1万ヘルツ以上の高周波数の音が含まれていることがあります。これが、トレーニング用CDでは英会話と一緒に音楽が流れてくる理由のようです。
2、リズムの違い
次にリズムについてですが、日本語では原則的に子音の後には必ず母音が続き、「子音+母音」のみで構成された音節がリズムの単位となっています(一部、「母音」のみ、あるいは「子音」のみの音節もあり)。しかし、英語では子音が連続したり、子音と子音の間に母音が挟まることが普通です。図示すれば、
日本語 |
基本的に、「子音+母音」・「子音+母音」・「子音+母音」……の繰り返し。 |
英語 |
「子音+母音」・「母音+子音」・「子音+母音+子音」・「子音+子音+母音+子音」・「子音+子音+母音+子音+子音」……など、色々な組み合わせが可能。 |
ということになるでしょう。
つまり、日本語では基本的に「子音+母音」で発音上の1ユニットが形成されるのに対し、英語では「子音+母音」・「子音+母音+子音」・「子音+子音+母音+子音」など、様々な組み合わせで発音上の1ユニットが形成されうる、ということです。
例えば、"strong(強い)"という形容詞の名詞形である、"strength(強さ)"という単語を考えてみましょう。"Strength"を日本語読みすると、おそらく「ストレンクス」というように6音節の単語になるでしょう。しかし、英語では実際には"strek"のように発音されます。
図示すれば、
strength |
strek |
子音+子音+子音+母音+子音+子音+子音 |
で表わされる、1音節の単語として認識されるわけです。日本語では、上のように子音が3つ連続して、その間に母音が挟まり、更に子音が3つ続く、などという音の配列は絶対にありえません。
日本語の基本はあくまでも「子音+母音」で1音節ですから、
strength |
ス |
ト |
レ |
ン |
ク |
ス |
su |
to |
re |
n |
ku |
su |
子音+母音 |
子音+母音 |
子音+母音 |
子音 |
子音+母音 |
子音+母音 |
のように、間に5個も母音が挟まり、全部で6音節にもなってしまうのです。
このように、言語にはそれぞれ固有のリズムがあり、そのリズムは小さな時から我々の体に染み付いたものです。ですから、日本人が英語を聞こうとしても、「子音+母音」・「子音+母音」……という母国語で慣れ親しんだリズムに基づいて先を予測しながら聞いてしまうので、それ以外のリズムが存在する英語にはうまくついていくことが難しいのです。
マジック・リスニングは、このリズムの違いにも対応できるようになっているようです。具体的には、「子音+母音」が連続する日本語では、どうしても英語に比べて母音が占める割合が増えてしまいます(先程の"strength"の例でも、英語では母音が1つしかなかったのに対し、日本語では5つもありました)。
結果的に、日本人の聴覚システムには母音ばかりを選んで聞き取ることに特化し、子音は相対的に聞こえにくい、という特徴があります。その子音をどのように聞き取れるようにするのか、ということですが、これにもまた周波数が係わってきます。
実は、英語に頻出する子音は、母音に比べると周波数が高いという特徴があるのです。マジック・リスニングは、トレーニングCDと専用ヘッドフォンで周波数の高い子音を聞き取る訓練をさせます。子音は英語の発音上のユニットでは始まりや終わりに現れることが多いので、子音を認識できるようになると、英語のリズムも正確に捉えられるようになる、ということです。
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このようにして、「周波数」と「リズム」という日本人が英語を学ぶ上での障害を取り除くのが、マジック・リスニングというわけです。並みいる英会話教材の中で、5万円とかなり高額な部類に入る代物ですが、それがなぜなのかお判りいただけたのではないでしょうか?
特定の場面で役立つ表現を教えることのみを意図された英会話教材とは異なり、マジック・リスニングは日本人に英語が聞き取れないその根本的な原因を解決しようとしているからです。
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