このページの内容は著者が提出したレポートの内容を元に編集したものです。また、プライバシーの保護のため、本文中に登場するインフォーマント(インタビューを行ったアメリカ人教師)の名前は変更してあります。
ネイティブの目から見た日本人の英語の発音
日本人の英語の発音は悪いといわれがちですが、発音を困難にしている要因は何なのでしょうか? 筆者は数年前、日本で英語を教えているアメリカ人教師にインタビューをし、彼らが日本人の英語の発音についてどう思っているかを聞いてみたことがあります。インタビュー対象は3名なので、今後更に掘り下げていく必要があるかと思いますが、参考になる意見を頂きました。今回から数回に分けて、そのインタビューの結果をご紹介したいと思います。
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インフォーマントの紹介
インタビューを行ったのは、いずれも日本の大学で教鞭をとる、3人のアメリカ人英語教師です。以下に、3人のプロフィールを簡単にご紹介いたします。
1. Ms. Melissa Carol Dunn(以下Melissa)
アメリカ中西部出身。日本滞在期間は約9年間。日本語、フランス語など、英語とは発音体系の違うそれらの言語を学んだ経験から、発音について強い関心を持つようになったといいます。
2. Mr. Todd Paul Klotz(以下Todd)
アメリカ南西部出身。スペイン語圏でも英語を教えるなど、3人の中では最も豊富な英語教育経験を持っています。また、日本滞在期間は約10年半で、3人のうちで最長です。
3. Mr. Scott Ray(以下Scott)
アメリカ北東部出身。元々は英語教育ではなく、音楽を専門としていましたが、来日して英語教員となりました。日本滞在期間は5年間で、3人の中では最短です。
インタビューの概要
インタビューでは、3人に、1)「日本人の英語の発音についてどう思うか」、2)「もし、日本人の英語の発音が悪いのであれば、その要因として何が考えられると思うか」、3)「日本人の英語の発音を改善するための具体策はあると思うか」という3点について、質問をしました。
1)日本人の発音についてどう思うか
まず、3人のインフォーマントが日本人の英語の発音についてどう思っているのかということについて、まとめてみます。
1. 日本人の英語の発音は良いとはいえない
ScottとMelissaの二人は、「日本人の英語の発音はあまり良いとはいえない」ということで意見が一致していました。たとえば、私が「日本人の英語の発音について、どう思われますか?」とScottにたずねると、 Scottは、「少し失礼かもしれませんが、日本人の発音のレベルは、香港など他のアジアの先進国と比較すると低いと思います。おそらく、それは中学・高校での教育によるものだと思います。日本の英語教育は、口頭のコミュニケーションよりも、読み書きを重視しているように思います。また、英語教師の中には、自分自身の発音にあまり自信を持っていない人もいるため、生徒の発音を矯正しないのでしょう」と指摘しました。
また、Melissaに同じ質問をすると、彼女は、「一般的に、カタカナの影響で日本人の発音は良くないように思います。カタカナの影響から、英語で話しているときでも、日本人は英単語を日本式に発音しようとしているようです」と答え、やはり日本人の発音はあまりよくないと考えているようでした。
2. 発音よりも積極性の問題
しかし、Toddだけは二人とは異なり、「日本人の発音が悪いとは思いません。発音よりも、むしろ話すことに対する消極性の方が問題だと思います。日本人の多くは、英語で話すことを躊躇しているように感じます。例えば、英語力は日本人と同じくらいでも、韓国人の学習者は、日本人に比べて話すことにより積極的であるように感じます」という答えが返ってきました。
Toddは、発音はそこまで悪くないとしても、積極的に英語を話そうとしない日本人の姿勢の方が問題であると考えているようです。
2)英語の発音を悪くする要因は何か
日本人の発音が悪い原因として、Scottは日本の学校教育の問題点を指摘しました。しかし、現在文部科学省の学習指導要領の改訂に伴い、中学・高校においては「コミュニカティブな英語力の養成」を目指し、その実現に取り組んでいることを考えると、学校教育以外の点にも問題があるのではないかと思われます(例えば、89年に改定された学習指導要領では、高校で「オーラル・コミュニケーション」の授業が新設されました)。
一方で、Melissaは、日本人の英語の発音が悪いのは、カタカナのせいであると言っていました。なぜカタカナが日本人の発音を悪くするのかとたずねると、Melissaは以下の2点を指摘しました。
1. 英語には、カタカナでは表記できない音がある
第一の理由として、Melissaは、英語にはカタカナでは表記できない音があるということを挙げました。英語には20の母音と24の子音、あわせて44の音素があるのに対して、日本語にはその約半分以下しかありません。
つまり、カタカナで英語の音を表そうとしても、英語の音に対応するカタカナがない場合があるのです。そこで、それらを表記する際には、その英語の音に近いカタカナで代用することになりますが、そのような表記が原因で、英語の発音までカタカナに引きずられてしまいます。それが、Melissaの言う「英語で話しているときでも、日本人は英単語を日本式に発音しようとしている」という言葉の意味であるようです。
(例)
(L とR )
Load[loud] Road[roud]
ともに英語では異なる音なのに、日本語では
ロード ロード
と同じ「ロ」で書き表してしまいます。ゆえに、日本人はこのL とRを区別して発音することが困難になっています。
(THとSとSH)
Something[sΛ'mθi`η] Sea[si:] She[∫i':《弱》∫i]
この3つの音も英語では異なる音なのに、日本語では、
サムシング シー シー
とすべて「シ」で表記されてしまいます。
同様の現象は、子音に限らず、母音でも当てはまります。たとえば、英語では[ae][Λ][э][a]のようにそれぞれの母音を区別しますが、日本語ではすべてまとめて「ア」と表記されてしまいます。
このように「日本語にはない音が英語にはあるために日本人の英語の発音が悪い」というのがMelissaの指摘です。
・ 音素を必ずしも区別する必要はない
しかし、Toddはこのような事実を軽視しているようです。Toddは、「例えば、LとRは確かに違う音であるが、文脈によってどちらか区別できる場合がほとんどであるため、たとえ日本人がこれら2つの音を区別して発音できないとしてもたいした問題ではない」と指摘しました。
Toddによれば、「例えば、"Japanese people eat rice every day.(日本人は毎日、米を食べます)"と言うべきところを、"Japanese people eat lice every day.(日本人は毎日、シラミを食べます)"と言ってしまったとしても、常識から考えて本当は"rice"を意図していることが判るため、たいした問題にはならない」ということです。
・ 音素を区別しないために誤解が起こることも
音素を厳密に区別できなくても、文脈から推測できるというToddに対して、Melissaは正反対の例を紹介してくれました。Melissaが授業で、
What did you do last Sunday(この間の日曜日に何をしましたか)?
ときいたところ、生徒が、
I prayed with my friends(友達と一緒にお祈りしました).
と答えたといいます。Melissaはそれを聞いて、「あなたはクリスチャンなのですか?」、「どこの教会に通っているのですか?」などと聞き始めたところ、生徒は困惑してしまったそうです。そして、よくよく聞いてみると、その生徒が本当に言いたかったのは、prayed(お祈りした)ではなく、played(遊んだ)だったということが判ったと言います。
Toddのあげたriceとliceの例のように、音素を厳密に区別できなくても、文脈や常識により相手の言いたいことは推測できるというのは、ある程度事実でしょう。しかしながら、Melissaの挙げた例のように、そのような違いが大きな誤解を生んでしまうこともあるようです。
2. カタカナの癖で余分な母音を追加してしまう。
Melissaが指摘したカタカナが日本人の発音を悪くする原因の2つ目は、子音の後に余分な母音を追加し、音節を多くしてしまう、というものでした。日本語ではいくつかの例外を除いて、ほぼすべての場合で子音と母音が1対1で対応しています。しかし、英語では子音が連続することが珍しくなく、子音と母音とは必ずしも1対1で対応してはいません。
Melissaによれば、日本語に慣れている英語学習者は日本語の癖で余分な母音を加えてしまい、結果的に音節の数まで増やしてしまうと説明をしてくれました。
(例)
英語では、
Bat[bat]
というように母音が1つしかなく一音節ですが、日本語では、
バット
tの後に余計な母音を入れてしまい、二音節になってしまいます。
Melissaの指摘するように、日本人が英語の発音を困難に感じる理由の多くは、英語と日本語との発音体系の違いに起因しているようです。インタビューでは更に、「日本人の英語の発音をよくするにはどうしたらいいと思うか」ということについても尋ねてみました。詳しくは、次のページをご覧下さい。
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