「新しい日常における英語語彙指導(2):学習方略指導と語彙テストの観点から」オンライン追加情報

本ページでは、大修館書店『英語教育』2020 年12月号掲載記事「新しい日常における英語語彙指導(2):学習方略指導と語彙テストの観点から」に関して、紙幅の都合上掲載することができなかったweb上のツール等をご紹介します。

語彙学習方略の指導

(1) 単語カード

Quizlet (https://quizlet.com/ja):単語学習ソフトウェア。

Memrise (https://www.memrise.com/ja/):単語学習ソフトウェア。

(2) 辞書使用

weblio(https://ejje.weblio.jp/):多義語のコア・ミーニングを調べる際に有益です。例えば、drawという単語を検索すると、「コア」という欄に「(ゆっくり滑らかに)引く」というコア・ミーニングがイラスト付きで掲載されています。

Just the Word(http://www.just-the-word.com/):英作文等をしている際に適切な表現を調べる際に有益です。詳細は中田 (2019)の第20章をご参照ください。

Google画像検索(https://www.google.com/imghp?hl=ja):単語の意味を視覚的に提示する際に有益です。例えば、画像検索で“glacier”を検索することで、この単語が何を指すのかを視覚的に把握することができます。

Dictionary.com(https://www.dictionary.com/):オンライン辞書。スピーカーのアイコンをクリックすると単語の発音を聞くことができます。

YouGlish (https://youglish.com/) :特定の表現が含まれているビデオを検索することができます。単語の発音や用例を検索する際に有益です。

語彙テスト

(1) 学習のための語彙テスト

研究結果:単語テストを累積的にするだけで英単語学習が3倍以上促進される(http://howtoeigo.net/2020/06/09/tq_cumulative/):累積テストに関する研究結果を解説したブログ記事です。

Auditory English Lexicon Project (AELP) (https://inetapps.nus.edu.sg/aelp/):10,170語の発音が収録されている音声ファイルがダウンロード可能。アメリカ英語、イギリス英語、シンガポール英語、男性・女性話者の選択ができます。

<音声情報を伴った単語学習>

リスニングやスピーキングで単語を使いこなすには、普段から音声情報を伴った単語学習をすることが欠かせません。具体的には、以下のポイントに注意をすると良いでしょう。

1) 単語が文脈の中でどのように発音されているかを聴く
2) 様々な話者による単語の音声を聴く
3)「綴りを見ながら発音を聴く」練習と「綴りを見ずに発音のみを聴く」練習を組み合わせる

ポイントの1)と2)はwebサイトYouglish (https://youglish.com/)を使うことで実践できます。例えば、まず単語帳や辞書で新出単語の意味・綴り・発音等を確認します。その後、Youglishで単語を検索して、その単語が「どのような文脈で使われているか」、「文脈の中でどのように発音されているか」、「話者によって発音がどう違うのか」を確認します。また、単語が使われている文の理解に努めたり、繰り返し発音を練習することで、リスニングやスピーキングの練習にもなります。

ポイントの3)に関してですが、時には文字情報(単語の綴り)なしに音声情報(発音)のみで単語を学習することも大切です。新出語を学ぶ際には、単語帳等で綴りを確認しながら発音を同時に聴くことが一般的でしょう。しかし、実際の聞き取り場面においては、文字情報は与えられないことが大半です。そのため、発音のみで単語の意味が想起できるように普段から練習することが欠かせません。

(2) 評価のための語彙テスト

Vocabulary Size Test (https://my.vocabularysize.com/):最大で14,000語までの英語語彙サイズを測定します。多肢選択式で、頻度レベルごとに10単語がテストされ、合計14セクション(1000語~14,000語レベル)で構成されています。英語初級者向けに選択肢の表示設定を母語にすることも可能です(対応言語:日本語、中国語、ロシア語、スペイン語、ベトナム語)。

V_YesNo (http://www.lognostics.co.uk/tools/index.htm):最大で10,000語までの英語語彙サイズを測定します。このテストはチェックリスト形式で、単語が一つずつ表示され、その単語の意味を知っている場合は”Yes”を、知らない場合は”Next”を選択します。頻度レベルごとに10単語がテストされ、合計10セクション(1000語~10,000語レベル)で構成されています。加えて、100の非単語が含まれており、非単語に”Yes”と選択した場合は、その数に応じてペナルティーが課せられ、総合得点から点数が引かれます。

VocabLevelTest.org (https://vocableveltest.org/):様々な形式(例:日本語→英語、英語→日本語)で学習者のレベルにあった独自の語彙テストを作成することができます。音声を使った語彙テスト機能が近日追加される予定です。

Vocabulary Levels Test (https://www.lextutor.ca/tests/):2001年版の語彙レベルテスト(Schmitt, Schmitt, & Clapham, 2001)は、4つの頻度レベル(2000語、3000語、5000語、10,000語)とアカデミック語彙(Academic Word List)の5つのレベルで構成されています。2017年版の語彙レベルテスト(Webb, Sasao, & Ballance, 2017)は、5つの頻度レベル(1000語、2000語、3000語、4000語、5000語)で構成されています。

2001年版・2017年版ともに、各レベルには30語が含まれ、合計150語がテストされます。学習者のレベルに合わせて、必要なセクションを適宜選択して使用することができます。86%の正答率(30問中26問正解)を超えた場合、そのレベルの語彙は習得されたとみなします(Schmitt et al., 2001; Webb et al., 2017)。

それぞれの語彙レベルを習得した場合、どのような言語活動が可能になるかを、以下の表1にまとめました。

表1:語彙レベルと可能となる言語活動のまとめ

語彙レベル 言語活動 参考文献
2,000語レベル 英語学習者向けの英語講義や教科書を理解できる Horst (2010)

Matsuoka & Hirsh (2010)

3,000語レベル 英語による日常会話・テレビ番組・映画・歌や、TOEFL iBTのリスニングセクションを理解できる Kaneko (2015)

Tegge (2017)

Webb & Rodgers (2009a, 2009b)

van Zeeland & Schmitt (2013)

4,000語レベル 英語による講義やTED Talkを理解できる Dang & Webb (2014)

Coxhead & Walls (2012)

5,000語レベル 英語で書かれたビジネス関連の教科書や、ビデオゲームの内容を理解できる Hsu (2011)

Rodgers & Heidt (2020)

8,000~9,000語レベル 英語で書かれた小説・新聞や研究論文を理解できる Nation (2006)

Hsu (2011)

10,000語レベル以上 TOEFL iBTテストのリーディングセクションが理解できる Kaneko (2014)

注)語彙レベルテストでは「8,000~9,000語レベル」と「10000語レベル以上」に関しては測定できませんが、参考までに掲載しています。

<補足:語彙サイズテストと語彙レベルテストの違い>

語彙サイズテスト(Vocabulary Size Test; VST)は、学習者がどのくらいの数の英単語を知っているかを推定したい場合に適しています。短時間で学習者の大まかな語彙サイズがわかるという利点がある一方で、サイズテストは語彙レベルごとの詳細な知識の測定には向いていません。つまり、「英単語を 3000 語くらい知っている」という全体的な語彙サイズは推定できても、「2000 語・3000 語レベルの単語をそれぞれどのくらい知っているか」に関する詳細な情報は得られません。

例えば、語彙サイズテストで以下のような得点をとった学習者がいたとします。

表2:架空の学習者のレベル別語彙サイズテスト得点

レベル 正答数
1000語レベル 10
2000語レベル 9
3000語レベル 6
4000語レベル 5

注)各レベルの満点は10点。5000語レベル以降の得点は0点と仮定する。

各レベルの正答数を合計すると、10 + 9 + 6 + 5 = 30となります。サイズテストでは、1問正解するごとに100語知っていると推定されるため、この学習者の語彙サイズは3000語 (30 x 100 = 3000)と推定されます。

表2に示されている通り、この学習者は、3000語レベルの問題には10問中6問正解しています。しかし、だからといって「3000語レベルの単語を60%知っているだろう」と推定することは望ましくありません。なぜなら、サイズテストではそれぞれのレベルにつき10問しか出題されていないため、全体的な語彙サイズを推定する事はできても、個別のレベルの知識を推定することは推奨されていないからです。

語彙レベルごとにより詳細な知識を測定したい場合(例. 「2000 語・3000 語レベルの単語をそれぞれどのくらい知っているか」を調べたい場合)は、語彙レベルテスト(Vocabulary Levels Test; VLT)が有益です。レベルテストでは、頻度レベルごとに30問が出題されます。そのため、各レベルにつき10問しか出題されないサイズテストよりも、レベルごとのより詳細な知識を推定するのに適しています。

文責:
中田達也(立教大学異文化コミュニケーション学部・准教授)
内原卓海(ウェスタンオンタリオ大学教育学部・博士課程在籍)
柳沢明文(ウェスタンオンタリオ大学教育学部・博士課程在籍)
江口政貴(オレゴン大学言語学部・博士課程在籍)

参考文献

Coxhead, A., & Walls, R. (2012). TED talks, vocabulary, and listening for EAP. TESOL ANZ Journal, 20, 55-65.

Dang, T. N. Y., & Webb, S. (2014). The lexical profile of academic spoken English. English for Specific Purposes, 33, 66-76.

Horst, M. (2010). How well does teacher talk support incidental vocabulary acquisition? Reading in a Foreign Language, 22, 161-180.

Hsu, W. (2011). The vocabulary thresholds of business textbooks and business research articles for EFL learners. English for Specific Purposes, 30, 247-257.

Kaneko, M. (2014). Is the vocabulary level of the reading section of the TOEFL Internet-based test beyond the lexical level of Japanese senior high school students? Vocabulary Learning and Instruction, 3(1), 44-50.

Kaneko, M. (2015). Vocabulary size required for the TOEFL iBT Listening Section. The Language Teacher, 39(1), 9–14.

Matsuoka, W., & Hirsh, D. (2010). Vocabulary learning through reading: Does an ELT course book provide good opportunities? Reading in a Foreign Language, 22, 56-70.

Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? Canadian Modern Language Review, 63, 59-82.

Rodgers, P. H., & Heidt, J. (2020). Levelling up comprehensible input and vocabulary learning: The lexical profile of videogames. In V. Werner, & F. Tegge (Eds.), Pop culture in language education: Theory, research, practice (pp. xx–xx). New York, NY: Routledge.

Schmitt, N., Schmitt, D., & Clapham, C. (2001). Developing and exploring the behaviour of two new versions of the Vocabulary Levels Test. Language Testing, 18, 55-88.

Tegge, F. (2017). The lexical coverage of popular songs in English language teaching. System, 67, 87-98.

van Zeeland, H., & Schmitt, N. (2013). Lexical coverage in L1 and L2 listening comprehension: The same or different from reading comprehension? Applied Linguistics, 34, 457-479.

Webb, S., & Rodgers, M. P. (2009a). Vocabulary demands of television programs. Language Learning, 59, 335-366.

Webb, S., & Rodgers, M. P. (2009b). The lexical coverage of movies. Applied Linguistics, 30, 407-427.

Webb, S., Sasao, Y., & Ballance, O. (2017). The updated Vocabulary Levels Test: Developing and validating two new forms of the VLT. ITL – International Journal of Applied Linguistics, 168, 34-70.

中田達也. (2019).『英単語学習の科学』研究社.