「新しい日常における英語語彙指導1: カリキュラム計画の観点から」オンライン追加情報

本ページでは、大修館書店『英語教育』2020 年11月号掲載記事「新しい日常における英語語彙指導1:カリキュラム計画の観点から」に関して、紙幅の都合上掲載することができなかったweb上のツール等をご紹介します。

単語の使用頻度に応じた指導

語彙習得を促進する上では、①重要な単語が、②様々な活動でバランスよく使用されるよう教員が計画することが大切です。

「英文中に重要な単語や表現がどの程度含まれているか」、「英文中に使用されている語彙が学習者のレベルにあっているか」を確かめるためには、以下のツールが有用です。

1. VocabProfiler (Tom Cobb先生:ケベック大学モントリオール校)

    • https://www.lextutor.ca/vp/comp/
    • 英文に含まれる単語を使用頻度(書き言葉や話し言葉でどのくらい頻繁に使用されるか)に応じて分類することが可能です。
    • 分類した情報をもとに、「指導において優先すべき重要な単語はどれか?」、「英文中に使用されている語彙が学習者のレベルにあっているか?」等を調べることができます。
    • 詳しい使用方法は以下の記事をご覧ください。

「語彙プロファイラー」で学習すべき英単語を見つける方法:Compleat Lexical Tutorの使い方

2. New Word Level Checker (水本篤先生:関西大学)

      • https://nwlc.pythonanywhere.com
      • 英文に含まれる単語の語彙レベルを調べることができます。
      • 語彙レベルは、以下の4つの語彙リストに基づいて計算されます。
        (1) New JACET 8000、(2) SVL 12000、(3) The New General Service List (NGSL)、(4) CEFR-J Wordlist
      • 詳細はhttps://mizumot.com/nwlc/about.html をご参照ください。

     

  • 3. Multiword unit profiler (江口政貴:オレゴン大学)
    • https://multiwordunitsprofiler.pythonanywhere.com
    • 熟達した言語使用者になるためには、その言語でよく使われるチャンク (e.g., It is important to, rather than, as a result of x 等)を使えるようになることが1つの近道です。チャンクを数多く知ることは、単語と文法を一語ずつ処理するのではなく、意味のかたまりごとに理解・産出し、4技能の流暢性の向上に繋がるからです(Boers et al., 2006; Kremmel et al., 2017)。Multiword Unit Proflierでは、覚えておくと有用なチャンクを英文の中から見つけ、その頻度や用法等を提示してくれます。
    • 詳しい使用方法は以下をご参照ください。
      https://masakieguchi.weebly.com/egumasa_notes/multi-word-unit-profiler

単語リスト

重要な単語を選定する上では、以下の単語リストも有用です。

  • New General Service List (NGSL): http://www.newgeneralservicelist.org/
    • 一般的な英語の文章の92%をカバーする高頻度語2800語を収録。
  • Academic Word List: https://www.wgtn.ac.nz/lals/resources/academicwordlist
    • 英語圏で使用されている大学レベルの教科書や論文など、学術分野で頻度が高い570語が収録された語彙リストです。文系や理系など専門分野を問わず使われる単語であるため、英語で知的に高度な内容を扱いたい際には、ぜひおさえておきたい単語です。
    • 高頻度語の学習を終えた後に学習すると効果的です。

1. Meaning-focused input (意味重視の理解活動)

英文に語注等を加える方法

  • Apps4EFL (https://www.apps4efl.com):英語学習に有用な様々なツールが公開されています。「Text to Flash」という機能を使うと、テキストを貼り付けるだけで、そのテキストに登場する英単語に関する語注を自動作成してくれます。
  • Rewordify.com (https://rewordify.com/)語注付きの教材を作成する際に活用できます。
    • テキストを処理した後に表示される結果画面の[Print / Learning activities]ボタンを押し、[Text with vocabulary (text on left with hard words underlined; definitions on right)]を選択すると、語注付きの教材として印刷可能な形式で表示してくれます。
    • [Settings]から語注を提示する単語の難しさを指定することができます。
    • 注釈中で用いられる英語が学習者には難しいと思われる場合や、文脈において適切でない場合には、日本語で意味を提示するのも良いでしょう。

多読関連のウェブサイト

  • The Extensive Reading Foundation (http://erfoundation.org/wordpress/):多読に適した教材(graded readers)の一覧など、有益な資料が掲載されています。 
  • Extensive Reading Central (https://www.er-central.com/):様々な難易度の英文テキストが掲載されており、学習者のレベルにあった教材を無料で読むことが出来ます。

以下のようなwebサイトからも多読に適した教材を入手できます。

多聴関連のウェブサイト

BBC Learning English

www.bbc.co.uk/learningenglish

Randall’s ESL Cyber Listening Lab (Beginners, intermediate, and Advanced)

https://www.esl-lab.com

ELLLO

http://www.elllo.org

BBC English Drama podcast

https://www.bbc.co.uk/programmes/p02pc9s1/episodes/player

2. Meaning-focused output (意味重視の産出活動)

活動案1:英文記事のコンセプトマップを作成し、それを元に記事の要約を英語で話す

概要:英文の意味理解が出来ていることを前提として、読解の授業で用いた記事に登場したキーワードを用いてコンセプトマップ(概念図あるいはグラフィック・オーガナイザーとも呼ばれる)を作成する。その後、コンセプトマップを元に記事の要約を英語で話す。

活動の目的:コンセプトマップを作成し、その後の表現活動へと段階的に指導することを目標とする。

Student Learning Objectives (SLOs):

  1. 表現活動に必要な概念(語彙)を書き出し、その関連性を線で結ぶことができる。
  2. 書き出した概念(語彙)同士の関連を表すための語彙(動詞など)を書き出すことができる。

手順

  1. 英文の要点や使用されていた語彙を書き出す。コンセプトマップの作成が難しい場合は、コンセプトマップで使用すべき英単語のリストを配るなどしてサポートする。そうすることで意味から形式を思い出すのではなく、形式を見て意味を思い出し、その上で単語を結びつける作業にフォーカスできる。時間制限を設けて段階的にサポートすることも可能。
  2. それぞれの概念を線で結ぶ。この際には、表現活動を意識して、どんな関連性を伝えるかを意識して結ぶ(因果関係、比較など)。
  3. トピックに関連する概念を書き出すように指示すると、名詞が出て来やすい傾向にある。これはコンセプトマップの特性なので仕方がないが、その後の産出活動では、コンセプトマップに書き出された名詞(トピックに関連する概念)を修飾するための形容詞や概念同士の関係を示す動詞が必要になる。このステップでは、そうした形容詞や動詞を追加する作業を行う。具体的には、2で結んだ線の付近に、概念同士の関係性を表現する動詞(例えば、leads to, have something to do with, increaseなど)を書き込む。この段階では、要約する英文の内容やその英文に含まれる機能(比較・分類・因果関係等)に応じて、その内容・機能を表現するための表現一覧などを教師が配っても良い。
  4. コンセプトマップを元に記事の要約を英語で話し、自宅でスマートフォン等に録音する活動(meaning-focused output)を行う。

* コンセプトマップの具体例については、以下をご参照ください。

https://www.dropbox.com/s/ehv4cya4n4shtun/Concept%20maps%20%28SLA%20%26%20Effective%20L2%20Teaching%29.pdf?dl=0

* コロナ禍におけるスピーキングタスク・活動については、「英語教育」8月号(pp. 44-45)もご参照ください。

3. Fluency development (流暢性を高める活動)

速読教材

Speed reading and listening fluency 

「1. Meaning-focused input」 で使用する多読・多聴教材も「3. Fluency development」に使用することが出来ます。

4. Language-focused learning(言語形式の学習)

Quizlet (https://quizlet.com/ja):単語学習ソフトウェア。Language-focused learningを自宅学習として課したい際に活用できます。

Memrise (https://www.memrise.com/ja/):単語学習ソフトウェア。同じく、Language-focused learningを自宅学習として課したい際に活用できます。

TED corpus (https://yohasebe.com/tcse/):ある表現がどのような文脈で実際に使用されているかを確かめることができます。

文責:
中田達也(立教大学異文化コミュニケーション学部・准教授)
江口政貴(オレゴン大学言語学部・博士課程在籍)
柳沢明文(ウェスタンオンタリオ大学教育学部・博士課程在籍)
内原卓海(ウェスタンオンタリオ大学教育学部・博士課程在籍)

参考文献

Boers, F., Eyckmans, J., Kappel, J., Stengers, H., & Demecheleer, M. (2006). Formulaic sequences and perceived oral proficiency: Putting a Lexical Approach to the test. Language Teaching Research, 10(3), 245–261. https://doi.org/10.1191/1362168806lr195oa

Kremmel, B., Brunfaut, T., & Alderson, J. C. (2017). Exploring the Role of Phraseological Knowledge in Foreign Language Reading. Applied Linguistics, amv070. https://doi.org/10.1093/applin/amv070

Nation, I. S. P. (2008). Teaching vocabulary: Strategies and techniques. Boston, MA: Heinle Cengage Learning.

中田達也. (2019).『英単語学習の科学』研究社.