Second Language Research (Sage) に論文が採択されました

査読付き国際誌Second Language Research (Sage)に論文が採択されました。詳細は以下の通りです。

Nakata, T. & Elgort, I. (in press). Effects of spacing on contextual vocabulary learning: Spacing facilitates the acquisition of explicit, but not tacit, vocabulary knowledge. Second Language Research.

紙媒体での出版は2021年になるようですが、オンラインで先行公開される予定です。

Routledge発行の書籍”Routledge Handbook of Vocabulary Studies”に論文が掲載されました

Routledge発行の書籍”Routledge Handbook of Vocabulary Studies”に論文が掲載されました。

書籍の詳細は以下の通りです。


書名:Routledge Handbook of Vocabulary Studies

編集:Stuart Webb

出版社:Routledge

目次と執筆者:

1 Introduction
Stuart Webb

Part I UNDERSTANDING VOCABULARY

2 The different aspects of vocabulary knowledge
Paul Nation

3 Classifying and identifying formulaic language
David Wood

4 An overview of conceptual models and thories of lexical representation in the mental lexicon
Brigitta Dóczi

5 The relationship between vocabulary knowledge and language proficiency
David D. Qian and Linda Lin

6 Frequency as a guide for vocabulary usefulness: High-, mid- and low-frequency words
Laura Vilkaitė-Lozdienė and Norbert Schmitt

7 Academic vocabulary
Averil Coxhead

8 Technical vocabulary
Dilin Liu and Lei Lei

9 Factors affecting the learning of single word items
Elke Peters

10 Factors affecting the learning of multiword items
Frank Boers

11 Learning single words vs. multiword items
Ana Pellicer-Sánchez

12 Processing single- and multi-word items
Kathy Conklin

13 L1 and L2 vocabulary size and growth
Imma Miralpeix

14 How does vocabulary fit into theories of second language learning?
Judit Kormos

Part Ⅱ APPROACHES TO TEACHING AND LEARNING VOCABULARY

15 Incidental vocabulary learning
Stuart Webb

16 Intentional L2 vocabulary learning
Seth Lindstromberg

17 Approaches to learning vocabulary inside the classroom
Jonathan Newton

18 Strategies for learning vocabulary
Peter Yongqi Gu

19 Corpus-based wordlists in second language vocabulary research, learning, and teaching
Thi Ngoc Yen Dang

20 Learning words with flashcards and wordcards
Tatsuya Nakata

21 Resources for learning single-word items
Oliver Ballance and Tom Cobb

22 Resources for learning multi-word items
Fanny Meunier

23 Evaluating exercises for learning vocabulary
Batia Laufer
Part III MEASURING KNOWLEDGE OF VOCABULARY

24 Measuring depth of vocabulary knowledge
Akifumi Yanagisawa and Stuart Webb

25 Measuring knowledge of multiword items
Henrik Gyllstad

26 Measuring vocabulary learning progress
Benjamin Kremmel

27 Measuring the ability to learn words
Yosuke Sasao

28 Sensitive measures of vocabulary knowledge and processing: Expanding Nation’s framework
Aline Godfroid

29 Measuring lexical richness
Kristopher Kyle

Part IV KEY ISSUES IN TEACHING, RESEARCHING, AND MEASURING VOCABULARY

30 Key issues in teaching single word items
Joe Barcroft

31 Key issues in teaching multiword items
Brent Wolter

32 Single, but not unrelated: Key issues in teaching single word items
Tessa Spätgens and Rob Schoonen

33 Key issues in researching multiword items
Anna Siyanova-Chanturia and Taha Omidian

34 Key issues in measuring vocabulary knowledge
John Read

35 Resources for researching vocabulary
Laurence Anthony


私は第20章の“Learning words with flashcards and wordcards”を担当し、単語カードを使った語彙学習について論じました。

今のところハードカバー版のみしか出版されていません。価格はハードカバー版が
24,000円以上(Amazon調べ)と少々お高いですが、その内廉価版のソフトカバー版が出版されずはずです。

語彙習得研究の知見を元に日々の語彙テストを最大限に活用する

以前、雑誌「英語教育」(大修館書店)に記事を執筆しました。
その記事の内容をこちらに再掲します。

 


語彙習得研究の知見を元に日々の語彙テストを最大限に活用する

近年、第二言語語彙習得に関する多くの研究が行われています。Nation (2013)は、「語彙習得研究の約30%が過去11年間に行われたものだ」と述べており、語彙習得研究が近年大きな注目を集めていることがうかがえます。

語彙習得研究は、大きく2つに分けることができます。1つは、どのような要因が語彙習得に影響を与えるかを調査する研究です。例えば、「どのような復習スケジュールが語彙保持に最も効果的か?」(e.g., Nakata, 2015a; Nakata & Webb, in press)といった問いは、このような研究で扱われます。もう1つは、語彙テストに関する研究です。例えば、「日本人の高校生はどのくらいの英単語を知っているか?」といった課題を調査するのが、語彙テストに関する研究の具体例です。

前者のような研究は英語教員にとって非常に有益なものです。どのような要因が語彙習得に影響を与えるかを知っていれば、語彙習得の効果を最大限に高めた授業実践をすることができるからです。一方で、実際に研究を行うとなると、限られた授業時間の中で様々な要因を統制し、厳密な実験を行うのはなかなかハードルが高いものです。また、学習者を対象とした実験を行うことに関して、倫理的な抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。一方で、語彙テストを使用する研究であれば、授業の一環として日々の活動にスムーズに組み入れやすいと考えられます。そこで本記事では、主に語彙テストに関する研究を取り上げ、それらを日々の実践に生かす方法について考えたみたいと思います。

なぜ語彙テストをするのか?

語彙テストは教室でどのように活用できるでしょうか? 1つの用途として、学習者が重要な高頻度語(high frequency words)を知っているかどうかを確認することが挙げられます。英語における高頻度語とは、最も頻繁に使われる2,000語を指します。なぜ、英語では高頻度語を覚えることが重要なのでしょうか? それは、「Zipfの法則」によります。Zipfの法則とは、ごく少数の単語があらゆるテキストの大部分を占め、それ以外の大多数の単語は、ほとんどまれにしか出現しないという現象のことです。例えば、英語においては、最も頻度が高い2,000語がBritish National Corpus全体の86.0%を占めますが、それ以外の18,000語は12.8%のみにしかならないことが示されています(Nation, 2013)。英語学習においては、まずこの高頻度語2000を知ることが欠かせません。学習者が高頻度語を知っているかどうかは、Vocabulary Levels Testというテストで測定することができます(リソース①・②)。また、「望月テスト」(リソース③)という日本人学習者用に開発されたテストを使うこともできます。

語彙テストはさらに、学習者のレベルにあったテキストを選ぶ際にも活用することができます。リーディングの授業等で、「教科書以外の英文を扱いたいが、どのテキストが学習者のレベルに合っているのかわからない」という悩みを持たれることがあるかもしれません。このような場合も、語彙テストの結果が役立ちます。これまでの研究では、既知語が95%~98%以上を占める文章であれば、内容理解が可能であることが示されています。例えば、学習者の語彙サイズが2000語である場合は、1000語・2000語レベルの語が95~98%以上を占めている英文テキストの使用が望ましいということです。学習者の語彙サイズは、Vocabulary Size Test(リソース①・②)や望月テスト(リソース③)を使用して測定することが出来ます。また、テキスト中にどのようなレベルの単語がどのくらいの割合で用いられているかを調べる際には、Range(リソース①)やVocabProfile(リソース②)等の語彙レベル分析ソフトが便利です。

テストは最強の語彙学習法!?

語彙テストを実施することには、もう1つの利点があります。それは、テストを受けることで、語彙習得が促進されるということです。ここで、Karpicke & Roediger (2008)によって行われた興味深い研究をご紹介します。彼らの研究では、アメリカ人大学生がスワヒリ語の単語40個をコンピュータ上で学習しました。彼らの研究の目的は、「学習」と「テスト」が第二言語語彙習得に与える影響を調査することでした。ここでいう「学習」とは、「chakula = food」のように、外国語(スワヒリ語)とその母語訳(英語)が提示され、それを覚えることを指します。一方の「テスト」では、「chakula = ???」のように外国語の単語が表され、その母語訳(ここではfood)を入力することが求められました。なお、テストの後には正解(フィードバック)は与えられませんでした。すなわち、chakulaという単語の意味が思い出せなかった場合、正解を確認することはできませんでした。

Karpicke & Roedigerは、学習とテストの回数を操作し、以下の4つの条件の効果を比較しました。

条件1:学習・テストともに約2回

条件2:学習が4回、テストが約2回

条件3:学習が約2回、テストが4回

条件4:学習・テストともに4回

1週間後にスワヒリ語を英語に訳すテストを行い、4つの条件の学習効果を測定しました。その結果、条件4は81%という非常に高い保持率に結びつきました。条件4は学習・テストともに4回と多かったので、この結果は納得できます。最も保持率が低かった(33%)のは、条件1でした。条件1は学習・テストともに約2回と少なかったので、この結果も納得できるものです。それでは、学習回数が多かった条件2と、テスト回数が多かった条件3とでは、どちらの方が効果的だったでしょうか? 意外なことに、保持率が高かったのは条件3の方でした。条件3における1週間後の保持率は81%で、条件4と遜色ありませんでした。一方で、条件2の保持率はわずか36%でした。

この研究から言えることをまとめると、以下のようになります。第1に、学習回数を2回から4回に増やしても、1週間後の保持率は有意には増えません(33⇒36%)。一方で、テストの回数を2回から4回に増やすと、1週間後の保持率は飛躍的に増えます(33⇒81%)。また、テストの回数が4回であれば、学習回数が2回であろうと、4回であろうと、保持率に有意な差はありません(ともに81%)。一言で言えば、語彙習得に影響を与えるのは、学習回数ではなく、テストの回数であるということです。すなわち、テスト自体に学習効果があるのです。これは「テスト効果」(testing effect)と呼ばれる現象です。テストに学習効果があることを考えると、教室で語彙テストを行うのは、リサーチという観点からだけでなく、学習を促進するという点からも大いに有益であると言えます。

このように、テストは研究者・学習者の双方にとって有益なものですが、採点に手間がかかるという欠点があります。しかし、これまでの研究では、フィードバック(正解)を与えなかったとしても、テストは学習を促進することが示されています。ご紹介したKarpicke & Roedigerの研究でも、テストの後にフィードバックは与えられませんでしたが、それでも大きな学習効果が見られました。

テストを採点して返却する場合、「学習者が内容を忘れてしまってからでは意味がないので、なるべく早く採点を終え、返却しなくてはいけない」というプレッシャーを感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、これまでの研究では、「テストの直後にフィードバックを与えても、時間をおいてからフィードバックを与えても、語彙習得に大きな差は見られない」という結果が得られています(Nakata, 2015b)。また、「時間をおいてからフィードバックを与えた方が、直後に与えるよりも記憶保持を促進する」という説もあります。テストを実施したからといって、すぐに採点・返却をしなくてはならないと過度に気負う必要はないと言えます。

今後求められる語彙習得研究

教室で語彙テストに関するリサーチを行う場合、どのようなテーマが考えられるでしょうか? 1つの研究テーマとして、語彙知識の深さを調査することが考えられます。多くの語彙テストでは、学習者が英単語と和訳を結びつけることが出来れば、その単語を「知っている」とみなします。しかし、「英単語を覚える」ということは、必ずしも「英単語の和訳を覚える」こととイコールではありません。語彙知識には、その単語の発音・品詞・語法・コロケーションに関する知識など、様々な側面が含まれます。これが、語彙知識の「深さ」と呼ばれる側面です。「日本人中学生・高校生がどのくらい深い語彙知識を持っており、それが長期的にどのように変化するか?」、「語彙知識の深さの中で、最も重要なのはどの側面か?」といったテーマは、非常に興味深いものです。また、語彙知識の深さに関するテストをすることで、「英単語を覚えることは、和訳を覚えることと必ずしもイコールではない」ということを学習者に認識させるという副次的な効果も期待できます。

また、テストがきわめて効果的な学習法であることを考えると、テスト効果に関するさらなる研究を行うことも有益でしょう。テスト効果に関するこれまでの研究の大半は、短期間の実験に基づいているため、テストが語彙習得に与える影響を長期的に調査する研究が求められます。また、「どのような形式のテストが最も効果的なのか?」、「語彙を定着させるには、どのようなスケジュールで何回テストすべきなのか?」、「テストを解いた後、どのようなフィードバックをどのタイミングで与えるべきなのか?」等、テスト効果を高めるためにはどうしたら良いかを調査することも有益であると考えられます。

ふだんの授業の中で、英単語テストを実施されている方は多いことでしょう。テストにひと工夫することで、学習効果をさらに高めたり、興味深いデータが得られるようになります。語彙テストを中心とした研究に、皆さんも挑戦されてみてはいかがでしょうか?

語彙習得研究に活用できるリソース

①Paul Nationのwebサイト:Vocabulary Levels Test等の語彙テストや、語彙レベル分析ソフトRangeが公開されています。

http://www.victoria.ac.nz/lals/about/staff/paul-nation

②Compleat Lexical Tutor:様々な語彙テストや、語彙指導を促進する有益なツール(例. オンライン・コーパス、語彙レベル分析ソフト等)が無料で利用できます。http://www.lextutor.ca/

③相澤一美・望月正道. (2010)「英語語彙指導の実践アイディア集」東京:大修館書店.単語テストの例が数多く紹介されています。「望月テスト」が収録されたCD-ROMも付属。

参考文献

Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319, 966–968.

Nakata, T. (2015a). Effects of expanding and equal spacing on second language vocabulary learning: Does gradually increasing spacing increase vocabulary learning? Studies in Second Language Acquisition, 37, 677–711.

Nakata, T. (2015b). Effects of feedback timing on second language vocabulary learning: Does delaying feedback increase learning? Language Teaching Research, 19, 416–434.

Nakata, T., & Webb, S. (in press). Does studying vocabulary in smaller sets increase learning? The effects of part and whole learning on second language vocabulary acquisition. Studies in Second Language Acquisition.

Nation, I. S. P. (2013). Learning vocabulary in another language (2nd ed.). Cambridge, UK: Cambridge University Press.

初出:「英語教育 2016年6月号」(大修館書店)

Wiley発行の査読付き国際誌The Modern Language Journalに論文が掲載されました

Wiley発行の査読付き国際誌 The Modern Language Journal に以下の論文が掲載されました。

Suzuki, Y., Nakata, T., & DeKeyser, R. (2020). Empirical feasibility of the desirable difficulty framework: Toward more systematic research on L2 practice for broader pedagogical implications. The Modern Language Journal , 104, 313-319. doi:10.1111/modl.12625

この論文は、以下の論文へのresponse paperとなっています。

Rogers, J., & Leow, R. P. (2020). Toward greater empirical feasibility of the theoretical framework for systematic and deliberate L2 practice: Comments on Suzuki, Nakata, & Dekeyser (2019). The Modern Language Journal. 104.

この論文を執筆するに至った経緯に関しては、神奈川大学の鈴木祐一さんがJapan Second Language Acquisition Research Forum (JSLARF)のwebサイトで詳しく報告してくれています。詳細は以下をご覧ください。

Japan Second Language Acquisition Research Forum

「英語教師力アップシリーズ第 5 巻授業力アップのための英語情報マニュアル」の第1章・2章を執筆しました。

「英語教師力アップシリーズ第 5 巻授業力アップのための英語情報マニュアル」の第1章・2章を執筆しました。

書籍の詳細は以下の通りです。


書名:英語教師力アップシリーズ第 5 巻授業力アップのための英語情報マニュアル

編著者:佐野富士子 小田寛人 (編)

発売日:2019年11月16日

定価:3,520円(税込)

出版社:開拓社

内容:
生徒の英語力向上をさらに押し進めるよう求められるにつれ、英語教師としての英語力、知識、技能をどう高めたらよいのか、そのような疑問を持ったときに役立つ情報が満載の一冊である。留学するには、調査・研究を行うには、アンケートやテストの結果をどう分析し、どこへどう発表するのか、使える英語力を育成するにはどのような授業を行えばよいのか、国際業務はどのように進めたらよいのかなど、多岐に渡るトピックを扱っている。

目次
第I部 自己研鑽編

第1章 海外留学に向けての出願
第2章 海外現地での授業参観
第3章 リサーチデザインの基礎知識
第4章 テスト作成の基礎知識
第5章 統計の基礎知識
第6章 学会発表(口頭発表)
第7章 論文の書き方と方略
第8章 研究倫理と知的所有権の保護

第II部 授業指導編

第9章 Teacher Talk
第10章 Corrective Feedback
第11章 Communication Strategy
第12章 Skit
第13章 Speech
第14章 Discussion
第15章 Presentation
第16章 Debate

第III章 授業外業務編

第17章 ALT対応:生活面のサポート
第18章 ALT対応:学校業務と授業
第19章 英語版「学校案内」の作成
第20章 国際交流先を開拓するには
第21章 学校内で行われる国際交流活動
第22章 海外研修の企画と指導
第23章 英語外部試験
第24章 派遣業務(報告)

付録:英語教育関連図書一覧
1.〈新しい英語教育について学ぶ・考える〉
2.〈教師力を上げる〉
3.〈自分の英語力を伸ばす・授業での説明のヒントを探る〉
4.〈動機づけを考える〉
5.〈学習者要因と学習方法〉
6.〈言語学習ストラテジーと言語使用ストラテジー〉
7.〈リスニング力とスピーキング力の育成〉
8.〈リーディング力の育成〉
9.〈ライティング力の育成〉
10.〈語彙指導について学ぶ・考える〉
11.〈フォーカス・オン・フォーム、文法〉
12.〈文法を学ぶ〉
13.〈発音や音声に関する知識と説明力を伸ばす〉
14.〈言語の使い方について学ぶ・授業での説明のヒントを探る〉
15.〈小学校英語について考えてみる〉
16.〈テストのあり方について学ぶ〉
17.〈テストの作り方を学ぶ〉
18.〈研究方法を学ぶ〉
19.〈統計の知識を増やす〉
20.〈論文の書き方と発表のしかた〉
21.〈用語集・英語教育の基礎概念の理解〉
22.〈論文・実践報告のための参考図書〉
23.〈その他、教師になる人のための参考図書〉
24.〈英語教師力アップシリーズ〉

開拓社webサイトより)


私は第1章「海外留学に向けての出願」と第2章「海外現地での授業参観」を執筆しました。

ちなみに編著者のお一人である佐野富士子先生は、私の恩師のお一人です。学部生の時に佐野先生の授業を受けたことをきっかけに、第二言語習得研究に興味を持ち、その後応用言語学で博士号を取得するにいたりました。

私を第二言語習得研究の道に進むきっかけを作って下さった佐野先生の書籍に執筆することができ、感無量です。

大学英語教育学会の合同研究会でシンポジウムのパネリストを務めます

3月20日(金)に行われる大学英語教育学会(JACET)の合同研究会で、シンポジウムのパネリストを務めます。詳細は以下の通りです。


JACET英語辞書研究会・JACET英語語彙研究会・関西英語辞書学研究会・JACETリーディング研究会合同研究会

2020年3月20日(金)10:40-17:30

場所:関西学院大学梅田キャンパス(アプローズタワー14階)

参加費:500円(予約不要)

●シンポジウム 題目:「効果的な第二言語(英語)習得への提言」
・「第二言語習得研究に基づく語彙の効果的な教え方・学び方」
中田達也(法政大学)
・「易しい語と難しい語―『コンパスローズ英和辞典』を例に」
赤須薫(東洋大学)
・「辞書力を鍛える?辞書力は英語力と比例する」
赤野一郎(京都外国語大学名誉教授)
・「音読が促進する第二言語(英語)習得」
門田修平(関西学院大学)


当日はsemantic clusteringやテスト効果についてお話しする予定です。新型コロナウイルス感染症の影響が心配ですが・・・

The Modern Language Journal (Wiley) のGuest editorを務めました

査読付き国際誌The Modern Language Journal (Wiley)のGuest editorを、鈴木祐一氏(神奈川大学)・Robert DeKeyser氏(メリーランド大学)と共同で務めました(Vol. 103, Issue 3)。

我々が編集した特集号のテーマは、”Optimizing Second Language Practice in the Classroom: Perspectives from Cognitive Psychology”というもので、認知心理学の知見(分散学習、テスト効果、適性など)を元に、効果的な外国語学習を行う方法について考察しています。

日本はもちろん、米国・英国・カナダ・ニュージーランド・スペインなど、様々な国を拠点とする研究者の論文が収録された、国際色豊かな内容になっています。

特集号の目次は以下のとおりです。

1. Optimizing Second Language Practice in the Classroom: Perspectives From Cognitive Psychology (YUICHI SUZUKI, TATSUYA NAKATA, & ROBERT DEKEYSER)

2. Weighing up Exercises on Phrasal Verbs: Retrieval Versus Trial-and-Error Practices (BRIAN STRONG & FRANK BOERS)

3. Investigating Distribution of Practice Effects for the Learning of Foreign Language Verb Morphology in the Young Learner Classroom (ROWENA E. KASPROWICZ, EMMA MARSDEN, & NICK SEPHTON)

4. Distribution of Practice Effects in the Acquisition and Retention of L2 Mandarin Tonal Word Production (MAN LI & ROBERT DEKEYSER)

5. Mixing Grammar Exercises Facilitates Long-Term Retention: Effects of Blocking, Interleaving, and Increasing Practice (TATSUYA NAKATA & YUICHI SUZUKI)

6. Should We Listen or Read? Modality Effects in Implicit and Explicit Knowledge (KATHY MINHYE KIM & ALINE GODFROID)

7. Investigating Effects of Working Memory Training on Foreign Language Development (YUKO HAYASHI)

8. Cognitive Individual Differences as Predictors of Improvement and Awareness under Implicit and Explicit Feedback Conditions (YUCEL YILMAZ & GISELA GRANENA)

9. Perfecting Practice (PATSY MARTIN LIGHTBOWN)

10. The Desirable Difficulty Framework as a Theoretical Foundation for Optimizing and Researching Second Language Practice (YUICHI SUZUKI, TATSUYA NAKATA, & ROBERT DEKEYSER)

特集号は以下からご覧いただけます。

https://onlinelibrary.wiley.com/toc/15404781/2019/103/3

Studies in Second Language Acquisition (Cambridge University Press) に共著論文が掲載されました

査読付き国際誌Studies in Second Language Acquisition(Cambridge University Press)に、鈴木祐一先生(神奈川大学)との共著論文が掲載されました。

Nakata, T., & Suzuki, Y. (2019). Effects of massing and spacing on the learning of semantically related and unrelated wordsStudies in Second Language Acquisition. 41, 287–311. doi:10.1017/S0272263118000219 [PDF]

研究の概要

外国語の単語を学ぶ上で、果物の名前(例. apple, banana, orange)、動物の名前(例. dog, cat, horse)、曜日の名前(例. Sunday, Monday, Tuesday)など、意味的に関連した単語を同時に学習することは一般的に行われていると考えられます。

意味的に関連した単語をまとめて学習することは、“semantic clustering”と呼ばれています。semantic clusteringは、日本に限らず、様々な国で広く行われている学習法であると指摘されています。

しかし、多くの研究者は、semantic clusteringは干渉(interference)を引き起こすため、語彙習得を阻害する有害な学習法であると警鐘を鳴らしています。例えば、right(右)とleft(左)という単語を同時に学習すると、それぞれが競合(干渉)し、どちらが「右」でどちらが「左」を意味するのか、混乱してしまうということです。

「semantic clusteringが学習を阻害する」という主張は、語彙習得に関する多くの専門書籍や学術論文において見られます。しかし、その主張の根拠として挙げられている研究を仔細に検討すると、「semantic clusteringが学習を阻害する」という主張は必ずしも妥当ではないように考えられます。

そこで、我々の研究では、semantic clusteringに関する今までの研究の限界をふまえた上で、semantic clusteringの効果を改めて調査しました。

また、「意味的に類似した単語を学習する上では、特に分散学習が効果的である」という主張を検証するため、集中学習(massed learning)と分散学習(spaced learning)が意味的に類似した単語の学習に与える効果も検証しました。

研究の結果

研究結果を要約すると、以下の通りです。

(a) これまで「semantic clusteringが学習を阻害する」と考えられてきたが、事後テスト得点において、そのような結果は得られなかった。

(b) しかし、意味的に関連がある単語の方が、そうでない単語よりも、より多くの干渉エラーに結びついた。すなわち、weasel(イタチ)という単語を和訳することが求められた時に、「イタチ」ではなく別の哺乳類の名前(アライグマやカワウソなど)を答えてしまうことが多かった。

(c) 意味的に類似した単語と類似していない単語のいずれにおいても、分散学習は集中学習よりも効果的だった。しかし、「意味的に類似した単語を学習する上では、特に分散学習が効果的である」という仮説とは反対に、分散学習は意味的に類似していない単語の学習に特に有効であった。

コメント

本論文は所定の費用を支払うことでopen accessとして無料で公開されています。「意味的に似た単語を一緒に学ぶのは良くない」というのは語彙習得研究者の間では長い間定説になっていましたが、その定説に疑問を投げかけたという点で、色々な方に読んでいただきたいと思い、open accessにしてもらいました。

書籍『英単語学習の科学』が研究社から発売されました

書籍『英単語学習の科学』が研究社から発売されました。

 

効果的な英単語の学習法や教授法について、最新の研究を元に解説しています。

 

出版社による内容紹介は以下の通りです。

 


 

著者:中田達也

 

版元:研究社

 

価格:1,800円+税

 

「単語帳で暗記しても実用英語には活用できない」「単語集ではなく文脈で覚えることこそ正しい」「忘れる前に復習しないと覚えられない」「選択問題をやっても語彙学習には役に立たない」などなど、ちまたにはびこる間違った「常識」をばっさり斬って、本当に効果的な英単語学習法・教授法をとことん解説。最新の第二言語習得研究の成果を紹介しながら、本当に役立つ英単語の覚え方を考察。多くの英語学習者・英語教師が待ち望んでいた英単語学習法のエッセンス集。

 


研究者・教員・学習者など、幅広い読者を念頭に執筆したつもりなので、色々な方に手に取って頂けるとうれしいです。

 

分担執筆した書籍 『実践例で学ぶ第二言語習得研究に基づく英語指導』が発売されました

分担執筆した書籍 『実践例で学ぶ第二言語習得研究に基づく英語指導』が大修館から発売されました。私は「第9章 語彙指導」を執筆しました。

書籍の内容は以下の通りです。

第1章 文法指導はどのように変わってきたか
1.はじめに
2.言語教授法はどのように変化してきたか
3.文法中心のアプローチ
 3.1 文法訳読法
 3.2 オーディオ・リンガル法
 3.3 PPP(Presentation-Practice-Production)
 3.4 文法中心のアプローチの問題点
4.コミュニケーション中心の教授法
 4.1 コミュニケーション中心のアプローチの問題点
 4.2 フォーカス・オン・フォーム――第3の道へ
 4.3 フォーカス・オン・フォームにはどのようなものがあるか
5.まとめ

第2章 目標項目を目立たせよう――インプット強化
1.はじめに
2.理論
 2.1 インプット強化とは
 2.2 なぜインプット強化は効果的か
3.研究――インプット強化は本当に効果があるか
4.授業での活用
 4.1 リスニングによる聴覚インプット強化(中学校)
 4.2 リーディングによるインプット洪水(中学校)
 4.3 リーディングによる視覚インプット強化(高校)
5.おわりに

第3章 目標項目の処理を手助けしよう--処理指導
1.はじめに
2.理論
 2.1 インプット処理理論
 2.2 処理指導
 2.3 明示情報
 2.4 構造化されたインプット活動
3.研究
4.授業での活用
 4.1 複数形の形態素-s(中学校)
 4.2 規則動詞の過去形(中学校)
 4.3 受動態(高校)
5.おわりに

第4章 話す活動と文法指導――フィードバック
1.はじめに
2.理論
3.研究
 3.1 間違いを訂正するべきか
 3.2 いつ間違いを訂正するべきか
 3.3 どの間違いを訂正するべきか
 3.4 どのように間違いを訂正するべきか
4.授業での活用
 4.1 発音の間違いに対する訂正フィードバック(中学校)
 4.2 単語の間違いに対する訂正フィードバック(中学校
 4.3 文法の間違いに対する訂正フィードバック(高校)
5.おわりに

第5章 ライティングのフィードバックの効果
1.はじめに
2.理論
 2.1 インタラクション仮説
 2.2 社会文化理論
3.研究
 3.1 フィードバックの効果に関する議論
 3.2 直接的WCFと間接的WCFの効果
 3.3 フォーカスされたWCFとフォーカスされないWCFの効果
 3.4 学習者の要因
 3.5 教員の要因
 3.6 個別指導におけるフィードバック
 3.7 フィードバックの活用
4.授業での活用
 4.1 ライティングを活用した時制の指導(中学校)
 4.2 1つのセンテンスを4人1組で作成する活動(中学校)
 4.3 要約文を書く練習(高校)
5.おわりに

第6章 タスクを効果的に用いよう
1.はじめに
2.理論
3.研究
 3.1 タスクの導入に関する研究
 3.2 タスクの性質に関する研究
 3.3 タスクの複雑さ
 3.4 タスクの複雑さに関する研究
 3.5 タスク前の準備時間に関する研究
4.授業での活用
 4.1 ホストファミリー探し(中学校)
 4.2 夏休みの予定(中学校)
 4.3 犯人の聞き取り調査(高校)
5.おわりに

第7章 ペア・グループワークの潜在力を引き出そう
1.はじめに
2.理論
3.研究
 3.1 ネイティブスピーカーのインタラクションとの比較
 3.2 コミュニケーションの手法
 3.3 タスクの様式
 3.4 習熟度
4.授業での活用
 4.1 問題点
 4.2 協力的なクラスルーム環境を作り出す
 4.3 プライミング
 4.4 意味のある練習
 4.5 フィードバック・トレーニング
5.おわりに

第8章 発音指導
1.はじめに
2.理論
3.研究
 3.1 世界全体の傾向
 3.2 指導の方向性
 3.3 4つの指導ポイント
4.授業での活用
 4.1 発音記号を使った指導法(中学校)
 4.2 Fight-Club Technique(中学校)
 4.3 授業・家庭学習・小テスト(高校)
5.おわりに

第9章 語彙指導
1.はじめに
2.理論
 2.1 語彙を覚えるとはどういうことか
 2.2 どのような単語を覚えるべきか
 2.3 語彙の意図的学習と偶発的学習
3.研究――効果的な語彙指導の原則
 3.1 単語の意味はどのように与えるべきか
 3.2 語彙の創造的使用
 3.3 キーワード法
 3.4 テストが記憶を強化する
 3.5 語彙の最適な復習間隔とは
 3.6 干渉を避ける
4.授業での活用
 4.1 フラッシュカードを用いた単語の練習(中学校)
 4.2 穴埋め問題(中学校)
 4.3 リーディング授業での語彙指導(高校)
5.おわりに

第10章 語用論指導
1.はじめに
2.理論
3.研究
 3.1 アウトプット誘導型タスクの効果
 3.2 インプット供給型タスクの効果
 3.3 語用論的能力を向上させるにはどうすればいいか
4.授業での活用
 4.1 依頼・謝罪・断り(面識度の低い人との対話1)
 4.2 依頼・謝罪・断り(面識のない人との対話)
 4.3 依頼・謝罪・断り(面識度の低い人との対話2)
5.おわりに

第11章 個人差とコンテクスト
1.はじめに
2.理論
3.研究
4.授業での活用
 4.1 対話例の活用法(中学校)
 4.2 リスニングでの活用法(中学校)
 4.3 ライティングでの活用法(高校)
5.おわりに

第12章 指導の評価――スキル学習理論の観点から
1.はじめに
2.理論
 2.1 英語が使えるようになるとは
    ――スキル習得理論の観点から
 2.2 繰り返し練習で手続き化と自動化を達成する
    ――練習のべき法則とスキルの転移の限界
 2.3 いつ評価するか
    ――スキル習得とスキル忘却の両側面から
3.研究
 3.1 語彙処理
 3.2 文法処理
 3.3 シャドーイング、文復唱課題、自由発話課題
4.授業での活用
 4.1 ディクテーションテスト(中学・高校)
 4.2 シャドーイングテスト(中学・高校)
 4.3 スピーキングテスト(中学・高校)
 4.4 ライティングテスト(高校)
 4.5 評価に関するQ&A
5.おわりに

第13章 まとめ――フォーカス・オン・フォームの指導
原則1 コミュニケーション活動中に言語形式への意識を高めること
原則2 インプット中心の指導を充実させること
原則3 インタラクションの機会を充実させること
原則4 個に応じた指導や場面を考慮した指導を行うこと
原則5 指導の効果をパフォーマンス・テストで測定すること

詳細は以下のwebサイトをご覧ください。

実践例で学ぶ第二言語習得研究に基づく英語指導

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