「英単語学習は第一印象が9割」査読付き国際誌Language Learningに論文が掲載されました

鈴木祐一氏(神奈川大学)とStella He氏(名古屋商科大学)との共著論文が査読付き国際誌Language Learning (Wiley)に掲載されました。

Nakata, T., Suzuki, Y. & He, X. (2023). Costs and benefits of spacing for second language vocabulary learning: Does relearning override the positive and negative effects of spacing? Language Learning, 73. doi:10.1111/lang.12553

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/lang.12553

この論文はデータを収集する前に研究の事前登録(pre-registration、いわゆるプレレジ)を行い、registered reportとして出版されました。

以下に、研究の概要をご紹介します。

背景

今回の研究の目的は、初回学習時(initial learning)と再学習時(relearning)における復習スケジュールの効果を調べることでした。

これまでの研究では、initial learningにおいて長い復習間隔(long spacing)を用いた方が、短い間隔(short spacing)を用いるよりも長期的な語彙学習を促進することが示されています。

しかし、relearningを行うと、initial learningでのlong spacingの優位性は消滅してしまう可能性も指摘されています(relearning override effectと呼ばれる現象です)。

本研究では、以下の4つの組み合わせを比較することで、initial learningとrelearningにおいてどのようなスケジュールを用いるのが最も効果的かを調べました。

条件 Initial learning Relearning
(1)   Short-Short Short spacing Short spacing
(2)   Short-Long Short spacing Long spacing
(3)   Long-Short Long spacing Short spacing
(4)   Long-Long Long spacing Long spacing

「長い復習間隔を用いた方が、短い間隔を用いるよりも長期的な語彙学習を促進する」というこれまでの研究に基づくと、initial learningとrelearningともに長い復習間隔を使うLong-Long条件(4)が最も効果的だと予想されます。

一方で、「はじめは学習負荷を低くして、後から難易度を徐々に上げた方が良い」という考えによると、initial learningでは短い間隔を用い、relearningでは長い間隔を用いるShort-Long条件(2)が最も効果的だと予想されます。

結果

Relearningの1週間後に行われた事後テスト得点は、以下のようになりました。

Long-Long > Long-Short > Short-Long = Short-Short

4条件の中で最も効果的だったのは、Long-Long条件でした。これは、「長い復習間隔を用いた方が、短い間隔を用いるよりも長期的な語彙学習を促進する」というこれまでの研究結果を支持するものです。

意外なことに、2番目に効果的だったのはLong-Short条件でした。この結果は、「relearningを行うと、initial learningでのlong spacingの優位性は消滅してしまう」という考え(relearning override effect)と一致していません。また、「はじめは学習負荷を低くして、後から難易度を徐々に上げた方が良い」という考えとも異なるものです。

本研究の結果は、「長期的な語彙習得を促進するためには、initial learningで長い復習間隔を用いることが最重要であり、relearningでどのようなスケジュールを用いるかはあまり重要ではない」ということを示唆しています。

人間関係にたとえるなら、「良好な関係を築くためには第一印象が一番大事であり、第一印象が悪いと後からいくら頑張っても挽回できない」と言えるかもしれません。

ということで、この論文の裏タイトルは、「英単語学習は第一印象が9割」になりました。

Registered reportの投稿・査読プロセス

この論文はデータを収集する前に研究の事前登録(pre-registration、プレレジ)を行い、registered reportとして出版されました。

registered reportの投稿・査読プロセスに関しては、この記事の続編をご覧ください。

事前登録(プレレジ)した論文が査読付き国際誌Language Learningに掲載された話

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