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.英検一級受験者の半分が「語源で単語を覚える」ことを知らない現実

 このように「語源で単語を覚える」ということは非常に便利な方法でありながら、ほとんどの日本人が知らない(あるいは知っていても使いこなせていない)、という悲しい現実があります。それは英語初心者はもちろん、上級者、英検一級を受験する人でさえ当てはまってしまうのです。

 それを証明するデータがあります。次の問題を見てください。以下は平成八年度の英検一級一次試験に出た問題です。この問題は難易度ではCランクに属します。Cランクとは、全受験者の40〜59%が正解した問題である、ということです。

 

If you break any of the club rules three times in one year, your membership will automatically be ( ).

(訳)もしあなたが何か会則を1年に3回やぶったら、あなたの会員資格は自動的に(   )されます。

 

 という問題です。「会則を3回やぶったら」なのですから、(   )内に入る語は「取り消される」とか「剥奪される」とか、そういう意味であることが予測できます。選択肢には、

 

1. convoked

2. invoked

3. provoked

4. revoked

 

 という4つの動詞の過去分詞形が並んでいます。この4つの中でそのような意味になりえるのはどれでしょうか?。英検一級受験者でも半分くらいしか正答を得られなかったというこの問題ですが、語源の知識さえあれば一発で正答を得ることが出来ます。

 まず、全てに共通するvokeですが、vocalという言葉を聞いたことがあるでしょう。バンドなんかの「ボーカル」のことです。「ボーカル」とは声を出して歌う人なのだから、vokeには「声」「呼ぶ」などの意味があることが推測できるでしょう。他にこの語幹を持つ語には、vociferous「大声で叫ぶ、うるさい(ferは運ぶ)」とかvocalize「発声する」などの語があります。つまり、これら4つの動詞は全て「声」または「呼ぶ」ことに関係する意味を持つ、ということが推理できます。この先はそれぞれの接頭語"con-"、"in-"、"pro-"、"re-"の意味を考えてみればいいのです。

 まずconですが、これは「一緒に」という意味です。コンピューターとはもともと「共にcom」「考えるpute」という意味であり、companionは「一緒にcom」「パンpan」→「一緒に食事をする人」で「仲間」です。となると、convokeは「一緒に」「呼ぶ」ということになりますね。「会員資格」を「一緒に呼ぶ」?。どうもずれているようです。

 次にinvokeです。inには「〜へ」「〜の上に」「〜の中に」など意味が幾つかあります。imposeなら「上にim」「置くpose」ので「税金や罰などを負わせる、課す」ですし、いわずと知れたinputは「中にin」「入れるput」、つまり入力することです。どちらにせよ、「会員資格」を「中に呼ぶ」でも「上に呼ぶ」でも「取り消す」という意味にはなりそうにありません。ということでこれもパスです。

 次にprovokeです。proposeが「前にpro」どうですかと「置いてpose」みることから「提案する」、prologueが「前のpro」「言葉logue」から「序文」となることから判るように、proは「前に」という意味です。「会員資格」を「前に」「呼ぶ」?。これもよく判りません。

 最後です。revokeですが、@return「後にre」「曲がるturn」ので「帰る」、reverseで「後にre」「曲がるverse」ので「逆にする」から判るように「後に」という意味と、Areplay「再びre」「プレイするplay」から「リプレイ」、reunion「再びre」「1つになることunion」から「再会」で判るように「再び」という2つの意味があります。実はこれが正解です。revokeは「再び」「呼ぶ」→「一度オーケーしたことを再び呼び戻す」ので、「取り消す、撤回する」という意味の動詞なのです。これなら、「会員資格」が「呼び戻される」→「取り消される」となり文脈にもぴったり合致しますね。

 ちなみに1番のconvokeは「一緒にcon」「呼ぶvoke」ので「会議などを召集する」、2番のinvokeは「上にin」、つまり天に向かって「呼びかけるvoke」ので「祈願する」、3番のprovokeは「前にpro」「呼ぶvoke」ので「相手を前方に呼びつける」から「立腹させる、刺激する」、あるいは「前に」「呼び起こす」ので「(笑いや悲しみなどを)引き起こす」という意味にそれぞれなります。

 では、例のように今までのことを表にまとめて見ましょう。

 

単語

語源の意味

単語の意味

convoke

con「一緒に」+ voke「呼ぶ」

「人々を呼び集める」⇒「(会議などを)召集する」

invoke

in「上に」+ voke「呼ぶ」

「上の天に向かって呼びかける」⇒「祈願する」

provoke

pro「前に」+ voke「呼ぶ」

「相手を前方に呼びつける」⇒「立腹させる、刺激する」

「前に呼び起こす」⇒「(笑いや悲しみなどを)引き起こす

revoke

re「再び」 +voke「呼ぶ」

「一度オーケーしたことを再び呼び戻す」⇒「取り消す、撤回する」

 

 このようになります。私には、この問題が受験者の語彙力をテストしている、というよりも単に受験者の基本的な語源に関する知識を問うているだけのような気がします。なぜなら、vokeという語幹はvocal、vocation、advocateなど英検一級受験者なら必ず知っているはずの多くの単語に含まれているものですし、その前につくcon、in、pro、reという接頭語はだれでも真っ先に覚えるような非常に基本的な接頭語なのです。つまり、少しくらい語源の知識のある人なら、たとえ高校生でも正解できるレベルの語源の知識しか問われていないのです(たとえば、I. S. P. Nationという人はTeaching & Learning Vocabularyという著書の中で「英語で最も役に立つ接頭語the most useful prefixes」20「英語における一般的なラテン語起源の接頭語the common Latin prefixes found in English」25というのを紹介していますが、この4つの接頭語は両方のリストに含まれているのです。これらがいかに基本的な接頭語であるかが理解していただけるでしょう)。

 それなのに、たった40〜59%の受験者しか正答を得られなかったということは驚嘆に値する、といわざるをえません。半数近くの英検一級受験者がabduction(=誘拐)、abhorrence(=嫌悪)、 abomination(=嫌悪)……、式の不毛な丸暗記をしているのでしょうか……。

 いくら語彙力強化に時間をかけたとしても、語源に関する知識を磨いておかないと絶対にかけた時間に比例するだけの成果は得られません。こんな便利な「語源で単語を覚える」という方法なのに、ましてや英検一級に挑戦するほどの英語好きの人でさえ、半分近くの人がきちんと身につけていないとは……。

 英検準一級や一級に挑戦する人は、口を揃えて「語彙が足りないんだよね」と言います。解決は簡単です! 英字新聞や洋書をがんがん読みたいけど語彙が足りない人、それも簡単です! 語源で単語を覚えましょう!


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